先日まで、四国の柏島で潜っていたわけですが・・・
その目と鼻の先で、「国籍不明潜水艦による領海侵犯」なーんて事件が起こっていたようです。
発端は、14日の午前7時前、足摺岬沖の豊後水道を航行中の海自イージス艦DDG-177「あたご」が、潜水艦の潜望鏡らしきものを発見、ソナー探知等で潜水艦の可能性が高い判断して追尾したものの、当該目標はすぐに領海外に逃走、約1時間半後に見失った・・・というものです。
大半の人は、「中国か・・・」と連想したことでしょう。
平成16年11月に中国の「漢」級原子力潜水艦が、石垣島沖の日本領海を侵犯したことは、記憶している人もいるでしょうし、太平洋への進出を目論む中国海軍は、海軍所属の海洋調査船などを派遣して、太平洋の海底地形や潮流データ等を熱心に収集しているとも聞きます。
・・・まぁ、ワタクシもこの件は、十中八九、中国潜水艦だと思います。証拠はありませんがね。
北朝鮮ははるばる日本領海まで侵入できるような外洋潜水艦は持ってません。
韓国は自国経済等がヤバめな時に、竹島問題以外で日本とあえて反目するようなおバカなことはしないでしょう。
ロシアも臭いといえば臭いですが、グルジア情勢で欧米と対立している状況で、さらに欧米側に属する日本とあえて緊張を高める理由はありません。
・・・とすれば、首相辞任で政治空白を狙った中国の仕業。もし証拠を掴まれて抗議があったとしても、国家元首が不在では、強硬な対応はとれない、ということを見越した上での意図的な侵犯であった可能性が高いと思われます。
目的はズバリ、日本の潜水艦探知能力と、自国の新鋭艦の能力を見極めること。
中国から太平洋に乗り出すには、沖縄を含む日本が邪魔になります。日本の海上自衛隊は、東西冷戦にあたって、特にソ連潜水艦隊に対抗する目的から、対潜水艦探知・攻撃能力を強化しており、その実力は米海軍に次ぐレベルとも言われています。
平成16年の漢級原潜の侵犯も、おそらく目的は同一でしょう。ただ、この時は見つかっただけでなく、延々と追跡され、中国に逃げ込むまで実況中継されてしまう、という潜水艦としては「最大の屈辱」ともいえる失態を演じてしまいました。
原潜は長期間潜航可能で、速力も速いという利点がありますが、その反面、動力音が大きくなりやすく、また大量の原子炉冷却水を放出するため、対潜哨戒機の赤外線探知に引っかかりやすいというデメリットがあります。
その反省を踏まえて・・・
今回送り込まれてきたのは、通常動力潜水艦。おそらく最新の「元」級潜水艦あたりではないかと推定します。
元(ユアン)級は、2006年に1番艦が就役したばかりの、中国最新鋭の潜水艦。原子力ではなく、ディーゼルエンジンとモーターで推進する通常動力潜水艦です。この艦には、補助機関としてAIP(非大気依存型機関)のスターリングエンジン(←これは自分で調べてね!)が搭載されていると言われ、水中航行性能が強化されていると思われます。
最新のイージス艦「あたご」が追尾し、見失ってしまったことから、「なんだ、最強のイージスがだらしない。海自はたるんでる」なんて言う人がいそうですが、そもそもイージス艦の意味を理解していないし、実は通常動力潜水艦というのは、現在においても発見と追尾が非常に難しいシロモノなのです。
なにしろ、潜航中でも大出力のタービンを回している原潜と異なり、潜航中はモーターの駆動音のみで圧倒的に静粛性に優れます。米海軍の最新型攻撃原潜ヴァージニア級では、探知されやすい沿岸での作戦行動に備え、あえて主機関を止めてバッテリーで駆動させる補助推進装置を搭載していたりするほどです。まして、船体サイズも原潜よりはるかにコンパクト。
そもそもレーダーや目視のきかない水中探知は、音波に頼るしかなく、海水の温度変化や海流などにも影響される、非常に繊細なものです。もし、確実に潜水艦を探知・追跡できるような艦ができたなら、それこそ潜水艦の存在意義はありません。現在の最新技術をもってしても、確実な探知が難しいからこそ、潜水艦は存在意義があるのです。
戦時であれば、複数の艦艇からの探知と、さらに搭載する対潜ヘリコプターを使って、とことん追い詰めることも可能でしょうが、平時にそこまでのことはできません。
問題の潜水艦は、日本領海で探知されずにどこまで航行できるかをテストするとともに、もし見つかった場合に、海自の追跡を振り切ることができるのかもテストする気だったと思われます。もしかすると、むしろ後者の目的の方が優先だったのかもしれません。そうでなくては、領海内で潜望鏡を上げるなんて、見つけてくださいと言わんばかりの行動はとらないでしょうから。
結果として逃げられたのは悔しいことですが・・・公表はされないにしろ、「あたご」では問題の潜水艦の音紋(その潜水艦特有の推進音サンプル。同型艦でも微妙に異なるので、対潜水艦戦闘のデータとして非常に重要)の採取などデータ収集をしているでしょう。
それを秘匿するために適当なところで追尾を打ち切り(打ち切ったことにして)、あえて国籍不明としていることも考えられます。だって、「侵犯潜水艦は、かくかくしかじかの理由で中国艦と判断しました。」なんて公表すれば、日本の探知能力のレベルと、相応のデータが取れたということを相手にも知らせているようなものですから。次はそれを超えることを目指してくるでしょう。
一部メディアや国民から多少批判されようと、潜水艦についての情報をあえて曖昧にすることで、「見失った」というのが、日本の探知能力の限界だったのか、ただ追尾を打ち切っただけのかわからない、侵犯艦についてどの程度の情報が収集されたのかもわからない、ということになり、今回の侵犯で本当に中国側が知りたかった情報を悟らせないための措置とも取れますね。
たとえ、実際には情報が取れてなくて、ハッタリだとしても、相手にそう思わせておくだけでも意味ありです。
もし上記の推測のとおり、それなりの情報が収集できているのだとしたら、中国の最新鋭艦の貴重な情報が得られたことになり、国民感情に迎合して感情的に相手を批判するより、国防上、意味のあることになります。
以上、軍艦マニアの視点から、今回の侵犯事件について語ってみました( ̄▽ ̄)
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